3本のピッケルの薄錆・クスミ取りをしたら、他のが見劣りするので・・・
暇に任せて、再度砂消しゴムで、ゴシゴシと・・・

現在販売されてるピッケルの殆んどは、
ヘッド・シュピッツェ(石突き)が塗装品で、余程使い込まないと剥げませんが、
炭素鋼・特殊鋼で無塗装の物は、置いて置くだけで酸化(錆)が進みます。
炭素鋼ピッケルは持ってないが、手入れを怠るとすぐ錆びる・・・
表面に黒錆が出来ると、それ以上の酸化は進まないが、赤錆は内部に侵入します。

ピッケルの錆取りに、紙・布ヤスリを使う方もいますが・・・
作業は早いが、番手の多いヤスリ(細かい)を使っても、金属面に筋(キズ)が出て、
その筋目が次の錆を呼びます。
錆落しの薬剤を塗り、錆を溶かして拭取る方法も有るが、金属には良くないです。
食酢に漬けて、錆を取る方法も有るそうです。

砂消しゴムは、時間が掛かるものの、キズが残らず綺麗に仕上がります。
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上 スコットランド マウンテン・テクノロジー製 750g  75cm
  ロールス・ロイス社の、山好き技術者が、独立して製造した物です。
下 フランス アルピレッド製 ルネ・ドメゾンモデル 700g  60cm
  シャフトは、超音速機コンコルドの骨材・超ジュラルミンを使用。
共に、バランスが良く使い易いピッケルです。
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アルピレッドは、シュピッツェの段差が無い設計で、刺さりが抜群です。
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ついでに ピッケル雑学 です

ピッケル各部の名称について
 
画像の金属部分全体をヘッドと呼びます。
ピック   スリップや滑落時に、雪面に刺して落下を確保します。(薪割りにも)
ブレード  氷雪面に足場を切るのに使います。(テントの排水溝堀りにも)
      湾曲カーブが色々だが、アルプスの谷に住む鍛冶屋が、
      その地区の山の氷に合った形状にしたと云われてます。
フィンガー シャフトとヘッドを繋ぐ二本の腕、通常3箇所止められてます。
      初期のピッケルには2箇所止めも有る。
シャフト  ヒッコリー・青タモ・トネリコ・アッシュ等の、
      木質が硬く粘りの有る木材が使われてました。画像はヒッコリー。
      ヒッコリーは昔のスキー板、タモは今でもプロ用バットに使われてる。
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シュピッツェ  氷雪に刺す部分。耐風姿勢を取る時にも重要な部分。(石突きとも)
ハーネス    シャフトに刺さってるシュピッツェを補強するカバー。
        画像に見える丸ピンで、木部・シュピッツェ・木部を貫通させ、
        脱落を防いでます。
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このピッケルは、スイスのアンデンマッテン。輸入用見本として送られて来たもの。
大振りで日本人には向かないとの理由で、輸入されなかった物、なので国内にはこれ一本。

ピッケルの鋼材について

鋼材は、炭素鋼と特殊鋼に分けられます。(日本山岳会発行〔山岳〕62年より)

炭素鋼 硬く安価だが脆い、錆・伸び・衝撃・低温に弱い。
特殊鋼 炭素鋼の欠点を補った鋼材。

特殊鋼の種類 クロム・モリブデン鋼
       炭素鋼に、クロム1%・モリブデン0.2%混ぜた鋼。
       高価なニッケルを使わず、ニッケル・クロム鋼と同等の性質。

       ニッケル・クロム鋼
       炭素鋼に、ニッケル2.5~3%・クロム0.55~0.95%混ぜた鋼。
       炭素鋼の欠点である脆さを改善した鋼。

       ニッケル・クロム・モリブデン鋼
       炭素鋼に、ニッケル1.6~2%・クロム0.6~1%・
       モリブデン0.15~0.3%混ぜた鋼。
       ニッケル・クロム鋼の性質を更に改善、一番錆び難い。

ピッケル価格は、炭素鋼<クロ・モリ鋼<ニッケル・クロム鋼<ニッケル・クロモ鋼
と、為ってるが鋼材表示(記号・マーク)をしてるメーカーは、
昔のカンプ・旧国産メーカー程度・・・

それと、炭素鋼は脆いと言っても、焼入れ・焼き戻しが適正なら、
国内の冬山程度では、充分に機能する。
       
現在は、ミゾーが高価なチタン鋼製のピッケルを販売してるが、
硬くて加工が難しいとか・・・
利点は軽い・熱伝導が少なく手が冷たく為らないとか・・・    


ピッケルの製造法と歴史について

ピッケルは、アルプス(スイス・フランス・イタリア・オーストリア)の鍛冶屋が、
1800年代後半に農具製作の片手間に、氷河を登り降りする為の杖と氷を割る斧を、
合体させたのが始まりと言う。

以後、製法が日本に伝わり、仙台の山之内東ー郎・札幌の門田直馬等が、
アルプス同様に手打ち鍛造での製造を始める。
しかし、一塊りの鋼を手打ちで伸ばしヘッドの形を造るのは、大変な手間が掛かり、
高価でもあった。(門田の鍛造工程画像)
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戦後の登山ブームで、スポーツ用品メーカー(ミズノ・トップ・ホープ・エバニュー)
等が、機械打ちの鍛造ピッケルを量産し、価格も安価で普及する。
当時、輸入物は国産の2倍~3倍の価格(1ドル360円時代)

手打ち・機械打ちの差は、価格の差であり鍛造の時代が続いたが、
溶接技術が進むと、細工が難しいフィンガーを溶接するメーカーも現れ、
不信感も・・・同時に1ドル360円時代が終わり、輸入物が買い易く為った。
1980年頃には、国産の量産メーカーは、ピッケルから撤退又は廃業の道を辿る。

メタルシャフトの時代になると、1961年に国産のカジタが登場する。
カジタの発想は斬新で、手間の掛かる鍛造では無く、鋼板をプレス機で打ち抜き、
ブレードを90度ネジリ、シャフトに固定する。プレス・アイゼンの発想。
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メタルシャフトなので、フィンガーも必要無く、簡単に出来るのだ。
ただ、ネジリの向きが右利きには使い易いが、左利きにには・・と言う話も有った。

カジタのアイスバイルで、ピックのセミチューブと云う形状は、
世界で例が無く、氷に打ち付けるとチューブの下から氷が飛び出し、
刺さりが良いとの評判だった。本場欧州ではハミングと言う名の模造品が出た。
既存のピックは、氷を割る感じで1回の打撃で決まらず、2度打ち・3度打ち・・・
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一部の岳人に愛用されたカジタも、創業49年・平成22年5月末で、
後継者が無く廃業・・・・職人と技術は、モンベルがアイゼン・ピッケルで継承。

尚、現在流通してる輸入ピッケルでも、溶接物は有ります。
ブレードの裏に三角錘の補強(アゴ)がして有る物は、溶接ピッケルです。
しかし、不安に思う必要は有りません、
昔と今とでは溶接技術が格段に進歩してますから。

それと、輸入ピッケル他の登攀用具に、CEマーク(EU安全基準適合マーク)や、
UIAAマーク(国際アルピニスト協会安全基準適合マーク)が付いてる物が有ります。
これは安心して使えるでしょう。

BD・ぺツル・グリベルのピッケルには、
B=ベーシック T=テクニカルの表示が有ります。用途により選んで下さい。