3月13日

ネパール政府、エベレスト入山を事実上禁止…テント共に寝泊まりで感染の危険

3/13(金) 20:13配信

読売新聞オンライン

【ニューデリー=小峰翔】世界的な新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ネパール政府は13日から5月末まで、中国との国境にそびえる世界最高峰エベレスト(8848メートル)の入山を事実上、禁止することを決めた。AFP通信によると中国も同様に入山を禁止しており、比較的気候が良い4~5月に集中するエベレスト登山は困難になった。
ネパール政府は発行済みの許可証を一時無効にし、新たな発行も見送る。エベレスト以外の山も対象にした。政府高官は13日、本紙に「感染拡大が広がっている国からの登山者が例年多く、寒冷な場所で何日も過ごす登山は感染が広がる恐れがある」と説明した。
エベレスト登山は一般的にシェルパらと複数で登り、テントで共に寝泊まりすることからも、感染の危険性があると判断したという。春は山頂やベースキャンプ近くで渋滞が発生するほどの人気で、昨春はネパール側からは644人が登頂した。ネパールは入山手数料だけで年数億円を得ている。

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影響はエベレスト登山にも ネパール 必要なビザ発給停止へ
2020年3月13日 16時02分NHN NEWS WEB

5月1日又は6月1日からの発給では、モンスーン(雨季)に入り、
トレッキングでの高山植物見物より出来ず、登山は無理ですね・・・

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エベレストにはネパール側とともに中国側からも登ることができますが、
地元のメディアによりますと、中国側ではすでに実質的に入山を禁じているとのとで、今回のネパール政府の措置で、当面の間、エベレストの登山はできなくなります。
エベレストはこれから春の登山シーズンを迎えるとあって、観光を主要産業とするネパール経済には大きな打撃になるとみられます。

エベレト登山に限らず、全ての外国人の入国を阻止する様です。
医療が充実してない現状では、仕方の無い事ですが、1人の旅行者が落とす金で、
10人が喰えると言われてるのだが・・・
登山隊(客)の荷を背負って、5~600円の日銭を稼ぐポーター達は大変だ・・・



感染者1人のネパールがコロナ対策でエベレスト登山を停止した理由

3/19(木) 17:51配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

ネパール経済に大きな打撃

 高山に挑む登山家は、世界で最も健康で丈夫な部類に属する人々だ。その目的地は、たいてい文明から遠く離れている。それでも、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)により、世界中で移動制限や隔離が行われている影響からは逃れられないらしい。

 チベット高原全域のあらゆる旅行・登山許可の発行を担う中国チベット登山協会(CTMA)は3月11日、中国が管理する山の北側からのエベレスト登山について、この春は一切許可を出さないと発表した。

 中国の発表に続き、ネパールもエベレストを含む今春の登山をすべて中止することを決定したと、地元紙カトマンズ・ポストは報じている。政府はすでに観光ビザの発給を一時的に停止しており、この措置は4月30日まで続くという。

 山岳観光は、ネパール経済を支える主力産業の1つ。エベレスト登山者だけで年間3億ドル以上の経済効果があるという。一切の登山を停止するという今回の決定は、山岳観光を生活の糧にしている地域社会にとって大きな痛手となるだろう。

「旅行者1人が、ネパールの11世帯を支えている計算です」と、カトマンズに本拠を置くツアー会社「シャングリラ・ネパール・トレック」のジバン・ギミレ氏は話す。「かなり厳しい状況になるでしょう。すぐには現れないでしょうが、大変な影響があるはずです」

 ギミレ氏によると、登山シーズンの度に旅行者でにぎわうロッジや商店が直撃を受けるという。

「もちろん、政府にも数百万ドルの収入となりますが、お金の90%は現地の人々に直接渡ります」とギミレ氏。「登山が家族を養い、学費や生活費になるのです。エベレスト登山がなくなれば、失業者があふれるでしょう」

 ネパールは実際、登山産業による大きな利益を優先してきた。例えば、2019年には外国人登山者に発行された登山許可証が381通に上り、危険なほどの混雑が報じられた。ネパール政府は2020年のエベレスト登山者数を減らすため、新たな規制を設けると発表。しかし最近になって方針を撤回し、結局その規制は実施しないことを決めた。

感染が広がりやすい山の環境

 ネパール政府が発表しているコロナウイルス感染数は、今のところ1件だけだ。だが、ネパールの医療専門家は、「ウイルスがネパールにも入ってくるかどうか」ではなく「いつ入ってくるか」を問うべきだと指摘している。ネパールの医師の割合は1000人あたり0.7人と比較的低く、感染に対処できるのか危惧される(米国では1000人当たり2.6人の医師がいる)。

「あまり健康状態が良くない、資金や物資が十分にない人々の間にCOVID-19が広がれば、大きな被害が出るでしょう」。エベレスト登山12回、ヒマラヤ地域への遠征20回以上の経験がある登山医師、モニカ・ピリス氏はこう話す。「こうした集団を守る責任があります」

 経済的な心配だけでなく、パンデミックが抑えられていない中でこの地域に旅行することの倫理的問題もある。これまでも、季節性インフルエンザはネパールにとって大きな問題だった。昨年、インフルエンザがクーンブ地方で猛威を振るい、多くの村がダメージを受けた。登山者も多く感染したが、主に影響を受けたのは現地の人々だった。

 ギミレ氏もこれに同意し、ほとんどのネパール人が3世代同居だと指摘する。コロナウイルスの場合、高齢者が重症化しやすいとされており、「インフラが不十分なこの国では、病気が流行すると大惨事になりかねません」

 通常の年でも、2週間のトレッキングを経てベースキャンプにたどり着くまでに病気にかかる登山者は少なくない。登山者もハイカーも、みな同じロッジに滞在する。こうした施設は小さく、グループで食事を取るうえ、水道水は多くの地域で限られているため、手洗いすらできないこともある。

「感染を広げる条件が揃っているのです」とピリス氏。「おびただしい数の人々が、それぞれ独自に変異したウイルスを世界各地から持ち込み、同じロッジに集まり、同じ狭いテーブルで食事をするのです。基本的な衛生対策すら限られています。感染症に極めて弱い状態です」

人の姿が消えるエベレスト

 この10年のエベレストは成功と悲劇を経験してきた。登頂数が記録的な数に達し、観光業がうるおった年もあれば、登山者も地域社会も大きな打撃を受けた苦しい年もあった。2014年には大規模な雪崩があり、クーンブ・アイスフォールで作業中だったネパール人ガイド16人が死亡。登山シーズンは中止された。

 翌2015年は、1974年以来初めてエベレスト登山者がゼロとなった。4月25日にマグニチュード7.8の地震が発生し、ネパール全体で約9000人が死亡、2万2000人が負傷し、重要なインフラが大きな被害を受けたためだ。一部の登山者は、地震の被害には遭わなかったものの、クーンブ・アイスフォールの上で「身動きが取れなくなり」、ヘリコプターによる救助を要請。被災地に出動していればもっと多くの人を助けられたであろう救援の手段を、別のことに使わせたと批判を呼んだ。

 過去2年間で際立つのは、混雑の激化だ。登頂数は2018年に807、2019年に891と、新記録を更新している。春の登山シーズンに、わずかな好天を逃さず山頂を目指そうという登山者が押し寄せる。結果、1本のロープにつながった登山者の列が無限に続くかのような写真が大きな注目を集めた。2019年、この山で命を落とした登山者は11人。人が多すぎるのが要因の1つだという指摘も出た。

 そして2020年シーズンは、重大な災厄により、5年間で2回目の登山者ゼロの年になりそうだ。

「コロナウイルスによる他の影響に比べれば、エベレストに登れないのは間違いなく軽い方です」。エベレストの立ち入り不可で影響を受ける山岳ガイド企業の1つ、アルペングロー・エクスペディションズ社のエイドリアン・バリンジャー氏はこう話す。「しかし、我々の顧客の多くが登山のために何年も準備し、多大な時間と費用をつぎ込んできました。残念ではありますが、慎重なアプローチは当然だと思います。決定に賛成です」

 バリンジャー氏の企業ではネパール人スタッフ22人とガイド10人を雇う計画だった。その全員に「少なくとも何らかの額」を支払うことを約束し、同時に、顧客にも可能な限り返金するよう努めている。「どのガイド会社も、ネパールにいる自社のスタッフを支援できるよう願っています」とバリンジャー氏は語る。

 近年のエベレストの混雑を考えると、この山への挑戦とそこでの生活が「一休み」するのはいいことかもしれない。環境への影響も小さくなる。「今は家族が集まる時なのかもしれません」とギミレ氏は話す。「欧米の人々は、家族とのつながりが薄れてしまっています。この時間を使って、家でみんなで過ごすのがいいのかもしれません」